・1 改正風営法(令和7年6月28日施行)について
・1.1 改正の背景
・1.2 改正の概要
・1.3 遵守事項・禁止行為について
・2 広告及び宣伝の取扱いについて
・2.1 規制される広告や宣伝について
・2.2 違反した場合
・3 まとめ
改正風営法(令和7年6月28日施行)について
本年5月28日に公布された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第45号。以下「改正法」という。)については、風俗営業の許可に係る不許可事由の追加に係る改正規定を除き、本年6月28日から施行されます。
私は、風営を専門とする行政書士ではありませんが、そんな私にも相談が来ますので非常に注目度が高いものとなっています。営業における禁止行為が明確に記載されたり、かなり踏み込んだ内容となっています。近年の「頂き女子りりちゃん」の事件や高額な売課金等のトラブルが相次ぎ、その対策が求められ今回の改正へと至りました。
ここでは、そのポイントについて記載したいと思います。
改正の背景
まず警察庁のHPより引用ですが、今回の法改正の背景として以下が記載されています。
いわゆるホストクラブにおいて遊興又は飲食をした女性客が、売掛金等の名目 で多額の債務を負担させられ、ホストやホストクラブ経営者から、その支払のために売春することや性風俗店で稼働すること等を要求される事案が発生し、社会問題化している。
検挙事例としは以下のような事例があります。
●当時ホストクラブ従業員であった者が、店での売掛金の返済名目で客の女性に現金を要求し、スカウトマンを介し、ソープランド従業員に紹介して売春をさせた事案。(同ホストクラブ従業員であった者、同スカウトマンその他関係者について、売春防止法違反、職業安定法違反等で検挙した。)
●ホストクラブの店長らが、店での売掛金を支払わせるため、客の女性をソープランド経営者に売春婦として紹介した事案。(同ホストクラブの店長その他関係者について、売春防止法違反及び職業安定法違反で検挙した。)
●ホストクラブ経営者らが、客の女性に対し、店での売掛金を返済するよう要求し、同女を指定したビジネスホテルに居住させた上、売春をさせた事案。(同ホストクラブの経営者らについて、売春防止法違反で検挙した。)

改正の概要
今回の改正は、以下の4つが軸となっています。
1.接待飲食営業に係る遵守事項・禁止行為の追加
■次の行為を接待飲食営業を営む風俗営業者のしてはならない行為(遵守事項)として規定
✓ 料金に関する虚偽説明
✓ 客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求
✓ 客が注文していない飲食等の提供
■次の行為を接待飲食営業を営む者に係る禁止行為として規定(罰則あり)
✓ 客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫
✓ 威迫や誘惑による料金の支払等のための売春、性風俗店勤務、AV出演等の要求
2.性風俗店によるスカウトバックの禁止
✓ 性風俗店を営む者がスカウト等から求職者の紹介を受けた場合に紹介料を支払うこと(いわゆる「スカウトバック」)を禁止(罰則あり)
3.無許可営業等に対する罰則の強化
✓ 風俗営業の無許可営業等に対する罰則の強化
(2年以下⇒5年以下の拘禁刑、200万円以下⇒1千万円以下の罰金)
✓ 両罰規定に係る法人罰則の強化(200万円以下⇒3億円以下の罰金)
4.風俗営業からの不適格者の排除
■ 次の者を風俗営業の許可に係る欠格事由に追加
✓ 親会社等(A、B及びC)が許可を取り消された法人
✓ 警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
✓ 暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
遵守事項・禁止行為について
今回の法改正で、接待飲食営業に係る遵守事項や禁止事項等の追加が行われました。
(1) 接待飲食営業に係る遵守事項の追加(法第18条の3)
接待飲食営業を営む風俗営業者は、その営業に関し、以下に掲げる行為をしてはならないこととした。
ア 法第17条に規定する料金について、事実に相違する説明をし、又は客を誤認させるような説明をすること。
イ 客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該接客従業者も当該客に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、以下に掲げる行為により当該客を困
惑させ、それによって遊興又は飲食をさせること。
(ア) 当該客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること。
(イ) 当該接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、当該客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること。
ウ 客が注文その他の遊興又は飲食の提供を受ける旨の意思表示(以下「注文等」という。)をする前に遊興又は飲食の全部又は一部を提供することにより、当該客を困惑させ、それによって当該遊興をさせ、若しくはしたものとさせ、又は当該飲食をさせること。
(2) 接待飲食営業に係る禁止行為の追加(法第22条の2及び第53条)
接待飲食営業を営む者は、その営業に関し、以下に掲げる行為をしてはならないこととした。
ア 客に注文等をさせ、又は当該営業に係る料金の支払その他の財産上の給付若しくは財産の預託若しくはこれらに充てるために行われた金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む。)に係る債務の弁済(以下「料金の支払等」という。)をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。
イ 客に対し、威迫し、又は誘惑して、料金の支払等のために当該客が以下に掲げる行為により金銭その他の財産を得ることを要求すること。
(ア) 売春防止法(昭和31年法律第118号)その他の法令に違反する行為をすること。
(イ) 対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交類似行為等(性交類似行為をし、又は他人の性的好奇心を満たす目的で、当該他人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくはこう
当該他人に自己の性器等を触らせることをいう。)をすること。
(ウ) 法第2条第6項第1号若しくは第2号又は第7項第1号の営業において異性の客に接触する役務を提供する業務に従事すること。
(エ) 性行為映像制作物への出演をすること。
(オ) 外国において売春をすること。
広告及び宣伝の取扱いについて
今回の改正に伴い、風俗営業における広告及び宣伝についても以下の通り通達が発表されました。

規制される広告や宣伝について
この通達を踏まえ、具体的な広告や宣伝の「文言」についても例示されています。
こちらも背景としては「ランキング制」等と称して接客従業者間で指名数、売上額等の営業成績を競わせ、営業成績上位者に表彰を行ったり、営業所内の役職を与えたりするなどして称揚する実態が、客には自身が好意の感情を抱く接客従業者の営業成績を向上させるために高額の遊興又は飲食をする意欲をそそらせるとともに、接客従業者には自身の営業成績を向上させるためには違法行為をもいとわない意識を醸成させるような状態が引き起こされることとなっている。ことが挙げられています。
以下、規制の対象となる文言の例です。
(1) 接客従業者の営業成績を直接的に示す文言の表示例:「年間売上〇億円突破」、「○億円プレイヤー」、「指名数No.1」、「億超え」、「億男」
(2) 営業成績に応じた役職の名称等の営業成績が上位であることを推認させる文言の表示
例:「総支配人」、「幹部補佐」、「頂点」、「winner」、「覇者」、「神」、「レジェンド」、「新人王」
(3) (1)及び(2)以外の「ランキング制」自体の存在、接客従業者間での優位性を裏付ける事実等の接客従業者間の競争を強調する文言の表示
例:「売上バトル」、「カネ」、「SNS総フォロワー数○万人」
(4) 客に対して自身が好意の感情を抱く接客従業者を応援すること等を過度にあおる文言の表示
例:「○○を推せ」、「○○に溺れろ」
いかがでしょうか。これまで当たり前の様に使用されていた文言ばかりかと思います。こういった広告は、今後指導の対象となります。注意が必要な点としては「この記載は店内も対象」という点です。店外や街の中の広告だけでなく、店の内部にも以前の様な看板は掲示できなくなりますので注意しましょう。
違反した場合
広告及び宣伝の規制違反を認めた場合は、当該違反行為を行っている風俗営業者に対して、違反状態を是正するよう行政指導を行うこととし、当該指導に従わない場合には法第25条に基づく指示処分等を検討することとされています。
また、営業所の内部に善良の風俗等を害するおそれのある広告物を設置しないことは、風俗営業の許可をするに当たっての技術上の基準となっていることから、新規許可の申請時には営業所内にそのような広告物を設置しないよう指導するほか、営業開始後にそのような広告物の設置が判明した場合には、広告及び宣伝の規制違反を認めた場合と同様、行政指導や営業所の構造及び設備の維持義務違反による指示処分等を検討することとされています。
この様に、広告についても新規許可の申請にも影響することとなります。
まとめ
悪質なホストクラブによる様々な被害の拡大を受け改正された風営法ですが、ホストだけに限らずこれまでグレーゾンと言われていた「コンカフェ」等の接待が疑われる業態の事業者様にも影響を及ぼすと考えられます。
無許可営業とみなされた場合の罰則は非常に厳しいものとなっておりますので、専門家にご相談いただきしっかりと法律を守った上で営業を行ってください。
※警察の取り締まりは、現在は大阪府内、兵庫県内でも管轄によって差があります。その辺りも踏まえ至急の対策が望ましいケースもあります。是非お早目にご相談ください。
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行政書士 藤崎 絢也
出身:兵庫県尼崎市
趣味:Twitter・サッカー・フットサル
性格:竹を割ったようなといわれます
自慢:レスポンスが早いです
好きな人物:高杉晋作
好きな言葉:学ぶとはいかに自らが知らざるかを知ること
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